前回の「業界研究~バイク(2輪車)~」の記事では、2輪車業界の業界規模や動向などについて2019年度決算数値および2020年11月までの情報をもとに記述をしましたが、
今回は、2020年度決算数値やその後のデータをもとに記述しております。
(次回は、2021年度決算確定後に新たに執筆いたします)
基本的に前回の記事に沿って記述していますので、前回記事👇とあわせてご覧頂きますと流れが把握しやすいかと思います。
バイク(2輪車)の業界規模
たしか、ホンダが世界で1位だったよね。
まぁ、前回の記事でどのメーカーが人気なのか少しは雰囲気がわかった気がするー
そうでしたね。
それでは、あれから各社の売上高や販売台数がどのように変化したかを見ていきましょう。
売上高
まず国内メーカーの売上と利益から見ていきましょう。
[各社の特徴については前回の記事(表の一番右の補足欄)をご覧ください]
国内メーカー | 売上高順位 (世界) | 部門売上高 | 部門利益 |
---|---|---|---|
ホンダ | 1 | 1兆7,872億円 ⇩ (対前年▲2,721 億円 ) | 2,246億円 ⇩ (対前年▲610 億円 ) |
ヤマハ発動機 | 2 | 9,464億円 ⇩ (対前年▲1,540 億円 ) | 184億円 ⇩ (対前年▲234 億円 ) |
川崎重工業 | 6 | 3,366億円 ⇩ (対前年▲11 億円 ) | 117億円 ⇧ (対前年+136 億円 ) |
スズキ | 9 | 2,065億円 ⇩ (対前年▲361 億円 ) | 26億円 ⇧ (対前年+19 億円 ) |
国内メーカー各社、売上をおとす結果となりましたが、世界市場におけるホンダの断トツ首位は変わらず、ヤマハがそれに続いています。
2輪事業改革に取り組んできたホンダは営業利益率が10%を超え、盤石の強さを誇っています。
前年は部門利益がマイナスだったカワサキは、プラス136億円で黒字化を達成しました。
2輪事業の低収益体質の克服が長年課題であるスズキは、前年よりも採算が改善しています。
2026年3月期までに利益率5%以上の達成を目標として部品共通化など構造改革を進めていく方針です。
下記の海外メーカーの売上高と比べると、今回も国内メーカーの強さがわかりますね。
それでは次に、海外メーカーの売上と利益を見てみましょう。
海外メーカー | 売上高順位 (世界) | 売上高 | 純利益 |
ヒーロー・モトコープ(インド) | 3 | 4,633億円⇧ (対前年+376億円 ) | 428億円⇩ (対前年▲88億円 ) |
ハーレー・ダビッドソン(アメリカ) | 4 | 4,431億円⇩ (対前年▲1,338億円 ) | 1.4億円⇩ (対前年▲453.6億円 ) |
バジャージ・オート(インド) | 5 | 4,077億円⇩ (対前年▲171億円 ) | 713億円⇩ (対前年▲27億円 ) |
BMW(ドイツ)(部門) | 7 | 2,998億円⇧ (対前年+164億円 ) | 135億円⇩ (対前年▲97億円 ) |
TVSモーター(インド) | 8 | 2,861億円⇧ (対前年+178億円 ) | 87億円⇩ (対前年▲1億円 ) |
ピエラモビリティ(オーストリア) | 10 | 2,009億円⇧ (対前年+190億円 ) | 45億円⇩ (対前年▲20億円 ) |
ピアッジオ(イタリア) | 11 | 1,724億円⇩ (対前年▲96億円 ) | 41億円⇩ (対前年▲14億円 ) |
隆鑫通用動力(中国)(部門) | 12 | 972億円⇧ (対前年+84億円 ) | – |
重慶宗申(中国)(部門) | 13 | 487億円⇧ (対前年+105億円 ) | – |
各社売上高の順位を見ると、ヒーロー・モトコープ(インド)とピエラモビリティ(オーストリア)がそれぞれ順位をひとつずつ上げ、その結果、ハーレー・ダビッドソン(アメリカ)とピアッジオ(イタリア)がひとつずつ順位を下げました。
特に、ハーレー・ダビッドソンは大きく売上をおとし、純利益1.4億円で気になるところですね。
日本国内のハーレーの新規登録台数を見ても、2011年度の1万1,609台から2020年度は7,846台と減少しており、シェアも60.1%から36%にまで減少しています。
一方でBMWやトライアンフなどがシェアを伸ばしているようです。
売上の話からは少しそれましたが、日本国内での海外メーカーバイクの新規登録台数の話になったので、せっかくなので今現在における、国内の輸入小型二輪車の新規登録台数についても見てみましょう。
2022年1月11日に日本自動車輸入組合(JAIA)が発表した2021年(1~12月)の輸入小型二輪車新規登録台数によると、2021年1月からの累計は2万3073台(前年同期比8.4%増)で、前年実績を3年連続で上回り、国内における輸入車の販売は好調です。
では、トップシェアのハーレーについてはどうでしょうか。
国内販売における海外メーカートップシェア5社はこんな感じです👇
メーカー | 新規登録台数 (対前年比) | シェア | ||
ハーレー・ダビッドソン | 7,682台(2.9%減) | 8年連続のマイナス | 33.3% | 12年連続の減少 |
BMW | 5,866台(5.5%増) | 3年連続のプラス | 25.4% | – |
トライアンフ | 3,183台(33.2%増) | 3年連続のプラス | 13.8% | – |
ドゥカティ | 2,217台(31.3%増) | 5年連続のプラス | 9.6% | – |
KTM | 1,688台(1.6%減) | 3年連続のマイナス | 7.3% | – |
残念ながらハーレーの2021年の国内規登録台数は、2.9%減の7,682台で8年連続のマイナス、シェアも33.3%で12年連続の減少といった厳しい状況が続いています。
(しかし、上記表の登録台数は海外から車両がこなくて登録できていないだけで、受注自体はすごく好調だと話すハーレーダビッドソンジャパンの社長さんを取材した記事もありますので、実際はデータから読み取れない部分もあると思われます。
記事:https://news.mynavi.jp/article/20210713-harley-davidson/)
それに比べ、ヨーロッパ勢が躍進しており、BMWやトライアンフ、ドゥカティなどの新規登録台数が増えています。
BMWは、普通自動2輪免許で乗れるモーターサイクルやスクーターから大型ツアラーやサーキットモデルまで、幅広いラインナップをそろえています。
トライアンフについては、輸入車のわりに車体がコンパクトでシートが低い車種が多く、小柄な人でも扱いやすいといった点や、レトロな雰囲気を好むユーザーの増加に対し「モダンクラシック」シリーズなどでうまく応えて販売台数を伸ばしています。
ドゥカティは、Lツインと呼ばれる、前側のシリンダーを水平近くまで倒したV型2気筒エンジンだけにこだわらずV型4気筒を投入したり、運転支援システムにも力をいれています。
輸入二輪車の過去の新車登録台数について詳しい情報を知りたい方は、こちらから日本自動車輸入組合(JAIA)さんのサイトに飛べます👇
販売台数
※国内→2輪車出荷台数、2020年、日本自動車工業会
※世界→2輪車需要、2020年、ヤマハ発動機推定
2020年の2輪車総需要は前年に比べ887万台減の4,449万台でした。
2019年から減少が続いています。
まずは、2輪車の販売台数をメーカー別で見てみましょう👇
[メーカー別販売台数]
メーカー | 販売台数 | 対前年比 (万台) | 順位変動 |
ホンダ(日本) | 1,513万台⇩ | ▲421 | – |
ヒーロー・モトコープ(インド) | 580万台⇩ | ▲59 | – |
バジャージ・オート(インド) | 397万台⇩ | ▲64 | 4→3位 |
ヤマハ発動機(日本) | 380万台⇩ | ▲125 | 3→4位 |
TVSモーター(インド) | 305万台⇩ | ▲21 | |
江門市大長江(豪爵)(中国) | 188万台⇩ | ▲8 | |
スズキ(日本) | 151万台⇩ | ▲18 | |
重慶宗申(中国) | 114万台⇧ | +11 | 9→8位 |
隆鑫通用動力(中国) | 107万台⇩ | ▲6 | 8→9位 |
力帆科技(中国) | 88万台⇩ | ▲7 | 11→10位 |
重慶銀翔実業(中国) | 86万台⇩ | ▲10 | 10→11位 |
五羊-本田摩托(中国) | 81万台⇩ | ▲8 | |
洛陽北方 | 72万台 | 新 | |
新大州本田摩托(中国) | 70万台⇩ | ▲12 | 13→14位 |
浙江緑源電動車(中国) | 63万台⇩ | ▲12 | 14→15位 |
ピアッジオ(イタリア) | 48万台⇩ | ▲13 | 15→16位 |
川崎重工業(日本) | 37万台⇩ | ▲12 | 16→17位 |
ピエラモビリティ(オーストリア) | 27万台⇩ | ▲1 | 17→18位 |
ハーレーダビッドソン(アメリカ) | 18万台⇩ | ▲3 | 18→19位 |
BMW(ドイツ) | 16万台⇩ | ▲1 | 19→20位 |
ドゥカティ(イタリア) | 4.8万台⇩ | ▲0.5 | 20→21位 |
トライアンフ・モーターサイクルズ (イギリス) | – | 21→22位 |
2輪車販売台数は売上と同じくホンダが断トツの首位を維持しており、4位のヤマハと合わせて世界市場の4割のシェアを占めています。
中国の重慶宗申以外は軒並み販売台数が減っている状況です。
主力市場のアジアの低迷が続く
次に、地域別に2輪車の販売台数を見てみましょう。
[市場規模(地域別販売台数)](総需要4,449万台)
市場 | 2019年 (万台) | 2020年 (万台) |
インド | 1,879 | 1,411⇩ |
アジアその他 | 2,388 | 1,978⇩ |
欧州 | 163 | 175⇧ |
北米 | 52 | 58⇧ |
日本 | 36 | 37⇧ |
その他 | 817 | 790⇩ |
インドだけで全体の3割、中国やインドネシアなどのアジア7ヵ国を合わせると7割にも達しています。
この表をご覧いただくとわかりますが、世界市場における販売台数の減少の原因は、世界総需要の約7割を占める主力市場であるインドや中国といったアジア市場の低迷と言えます。
それに対し、日本や欧米などは市場が成熟しているので底堅い結果となっています。
それではなぜアジア市場が低迷しているのか、やはり新型コロナウイルスの感染拡大の影響が大きいようです。
東南アジアなどは需要回復の目途がつかない状況で、インドについても部品メーカーを含め工場停止が相次ぐなど厳しい状況が続き、前年に比べてインドだけで販売台数が468万台も減少しています。
東南アジアやインドなどの新興国は先進国に比べて回復が遅く、ゆっくり回復していくと思われますが、どこまで挽回できるかの見通しはたっていません。
国内市場
一方で、国内の2輪車市場はどうでしょうか。
アジアでの販売台数がのきなみ減少しているのに対し、日本国内における2輪車の販売台数は現在好調です。
ちなみに国内の乗用車販売台数は減少しています。
2輪車販売台数(各年1~12月)👇
(※前回の記事では各年1~11月のデータでしたが今回は12月までのデータです)
年 | 原付一種 | 原付二種 | 軽二輪 | 小型二輪 |
2015 | 193,842 | 94,851 | 51,277 | 66,621 |
2016 | 162,130 | 101,424 | 46,429 | 62,908 |
2017 | 174,259 | 88,765 | 56,586 | 64,003 |
2018 | 143,129 | 105,536 | 57,229 | 63,220 |
2019 | 132,086 | 105,403 | 58,359 | 66,456 |
2020 | 122,416 | 101,737 | 74,392 | 67,379 |
2021 | 127,736 | 125,674 | 78,911 | 83,571 |
※原付一種(~50cc)、原付二種(51~125cc)、軽二輪(126~250cc)、小型二輪車(251cc~)
※原付一種、原付二種は出荷台数(日本自動車工業会調べ)
日本自動車工業会:http://jamaserv.jama.or.jp/newdb/index.html
※軽二輪は届出台数、小型二輪は新規検査台数(全国軽自動車協会連合会調べ)
全国軽自動車協会連合会:https://www.zenkeijikyo.or.jp/statistics/2new-year
減少傾向だった原付一種(~50cc)と原付二種(51~125cc)は2021年に増加に転じました。
軽二輪(126~250cc)は2017年から徐々に増加を続け、とくに2020年から大きく販売台数が増え好調を維持しています。
各メーカーの努力で軽2輪スポーツなどの魅力的な商品に加え、やはり車検がない(車検→排気量251cc以上)という点も人気なのでしょう。
そして小型二輪(251cc~)については、近年6万台の販売数が続いていましたが、2021年は83,571台と大きく販売数を伸ばしました。
このように、国内における2輪車の販売が好調となった理由としては、「購入がしやすい・密を避けられる」という点がやはり今の世情に合っているからなのではないでしょうか。
そもそも自動車は、CASEなどへの時代の流れもあり購入価格や維持費が高く、すぐに買えるような乗り物ではありません。
それに比べれば2輪車は比較的に敷居が低いうえ、自転車だけでなく自動車よりもむしろ速達性が上です。
そして、コロナ禍における感染防止という観点でも、密室にならない2輪車の役割が見直され市場が拡大しているのだと思われます。
一方で、バイク業界においては、今後焦点になるのは電動化だとも言われています。
日系メーカー4社は電動バイクのバッテリー仕様を共通化することを発表し、脱炭素化へ協力して取り組む姿勢がみられます。
競争と協調の領域をどのように見い出すのか各社は難しい選択に迫られています。
2021年度の決算を待ちましょう。
コメント