新型コロナウイルスの脅威は、世界の2輪車市場にも大きな衝撃を与えました。
国内でも、モーターサイクルショーが開催中止となったり試乗会も自粛を余儀なくされましたよね。
ところがどっこい、2020年(1~11月)の国内の2輪車販売実績をみると、前年同期を上回って好調を維持しています。
「3密回避」で他人との接触が少ないパーソナルな移動手段として、先進国を中心に2輪車が見直されているようです。
国内では春のバイク需要期に入り、ホンダ、ヤマハ、カワサキ、スズキといった2輪車販売各社の販促活動がいっそう活発になっています。
今回はそんな2輪車市場について見ていきたいと思います。
新しい記事をアップしました👇そちらもぜひご覧ください。
バイク(2輪車)の業界規模は?
やっぱりハーレーが多いんじゃないの?
私の周りはスズキに乗ってる子が多いよ
いや、やっぱ男カワサキが人気だろー
まぁ、優等生のホンダが売れているでしょうね。
大治郎~!
売上高
国内メーカー | 売上高順位 (世界) | 部門売上高 | 部門利益 | 補足 |
---|---|---|---|---|
ホンダ | 1 | 2兆0,593億円 | 2,856億円 | 日本が誇る自動車とバイクメーカー。 バイクでは世界最大手。 世界中であらゆるカテゴリーのバイクを手掛けている。 |
ヤマハ発動機 | 2 | 1兆1,004億円 | 418億円 | 世界大手。アジア、とくにインドネシアが中心。 バイクの他にも発電機・産業用ロボットなどを手掛けている。 |
川崎重工業 | 6 | 3,377億円 | ▲19億円 | 日本を代表する総合重工業メーカー。 中大型バイクに特化、Ninjaシリーズが看板。 |
スズキ | 9 | 2,426億円 | 7億円 | 軽自動車とバイクに強みがあり、インドの4輪市場では圧倒的な存在感。 採算改善が経営課題 |
※ホンダは二輪事業、ヤマハ発動機はランドモビリティ事業、川崎重工業はモーターサイクル&エンジン事業、スズキは二輪車事業の売上高です
世界市場で見てもホンダが断トツで、ヤマハ発動機がそれに続いています。
ホンダは2輪車の収益性が高く、不振の4輪車を支える構図になっています。
下記の海外メーカーの売上高と比べると国内メーカーの強さがわかりますね。
海外メーカー | 売上高順位(世界) | 売上高 | 純利益 | 補足 |
---|---|---|---|---|
ハーレー・ダビッドソン(アメリカ) | 3 | 5,769億円 | 455億円 | ハーレーの愛称。 高級大型バイク。好採算。 |
ヒーロー・モトコープ(インド) | 4 | 4,257億円 | 516億円 | インド最大手。国際展開強化。 ホンダとの合弁会社を2010年に解消し独自路線へ。 |
バジャージ・オート(インド) | 5 | 4,248億円 | 740億円 | インド2位。3輪も強い。バジャージ財閥の中核。 日本の川崎重工業からの技術供与を受け成長。 |
BMW(ドイツ)(部門) | 7 | 2,834億円 | 部門EBIT232億円 | 高級大型バイクに強み。 ドイツの高級自動車メーカー。 BMW、MINI、ロールスロイス、オートバイはBMWのモトラッドブランドで世界展開。 |
TVSモーター(インド) | 8 | 2,683億円 | 88億円 | インド大手。スズキからの技術供与で成長。 |
ピアッジオ(イタリア) | 10 | 1,820億円 | 55億円 | アプリリア、ベスパなど多くのブランドを展開。 売上高の約5割は欧米で約3割がインド。 |
ピエラモビリティ(オーストリア) | 11 | 1,819億円 | 65億円 | 旧KTMインダストリーズ。オフロードバイクに強み。 |
隆鑫通用動力(中国)(部門) | 12 | 888億円 | – | – |
重慶宗申(中国)(部門) | 13 | 382億円 | – | – |
1900年前半にオートバイ・バイクが世界に誕生し、当初は欧州メーカー同士の競争が主流でしたが、戦後は欧米バイクメーカーの牙城を日本オートバイメーカーが崩していきました。
それでは、日本国内メーカー4社の売上はどのように推移してきたのでしょうか。
2007年以降の4社合計の売上推移を見ると、2012年までは世界的な不景気や円高の影響で停滞していました。
2007年までの2輪車市場の拡大を牽引してきたは、新興国を中心とした海外での業績です。
国内4社は、世界的に高いシェアを武器に、新興国需要をうまく捉え、2輪車業界は拡大を続けてきました。
しかし、2008年の金融危機を発端に、東南アジアや南米の新興国で販売が伸び悩み、さらに日米欧でも個人消費の落ち込みで需要が低迷し、外需による急拡大を続けてきた2輪車業界は失速する事態になりました。
その後、2013年から増加傾向になりましたが2016年にいったん減少、その後2017年から再び増加に転じていましたが、2019年にまた減少となりました。
後で見ますが、2020年は回復する見込みです。
現在は、台頭するインドのオートバイメーカーと日本勢との競争に軸が移っています。
販売台数
※国内→2輪車販売台数、2019年実績、日本自動車工業会
※世界→2輪車需要、2019年実績、ヤマハ発動機推定
2018年の世界の二輪車需要は前年比6.2%増の5,736万台を記録しましたが、2019年は5,336万台と2輪車の世界需要は減少に転じました。
2輪車販売台数をメーカー別に見てみると、ホンダが世界首位で断トツの販売台数で、ヤマハ発動機も世界3位と、この日系メーカー2社でなんと世界の45%程度のシェアを占めています。
メーカー | 販売台数 | 出資・提携関係 |
---|---|---|
ホンダ(日本) | 1,934万台 | 業務提携:ヤマハ発動機 関連会社:五羊本田 50%保有→新大州本田 |
ヒーロー・モトコープ(インド) | 639万台 | |
ヤマハ発動機(日本) | 505万台 | 業務提携:ホンダ |
バジャージ・オート(インド) | 461万台 | 業務提携:トライアンフ・モーターサイクルズ 48%保有→ピエラモビリティ |
TVSモーター(インド) | 326万台 | 業務提携:BMW |
江門市大長江(豪爵)(中国) | 196万台 | 合併:スズキ(スズキのオートバイのOEM生産を行う。 中国でシェア首位) |
スズキ(日本) | 169万台 | 合併:江門市大長江 |
隆鑫通用動力(中国) | 113万台 | |
重慶宗申(中国) | 103万台 | |
重慶銀翔(中国) | 96万台 | |
力帆実業(中国) | 95万台 | |
五羊本田(中国) | 89万台 | ホンダの関連会社 |
新大州本田(中国) | 82万台 | ホンダが50%保有 |
緑源(中国) | 75万台 | |
ピアッジオ(イタリア) | 61万台 | |
川崎重工業(日本) | 49万台 | 2019年に川崎重工業モーターサイクル&エンジンカンパニーの 欧州法人とビモータが合弁会社を設立 |
ピエラモビリティ(オーストリア) | 28万台 | バジャージ・オートが48%保有 |
ハーレーダビッドソン(アメリカ) | 21万台 | |
BMW(ドイツ) | 17万台 | 業務提携:TVSモーター |
ドゥカティ(イタリア) | 5.3万台 | VW(フォルクスワーゲングループのアウディ)傘下 |
トライアンフ・モーターサイクルズ (イギリス) | – | 業務提携:バジャージ・オート (スポーツ走行向きの大型バイクに強み) |
※中国企業の台数は中国汽車工業協会
こんなにホンダが多いのかぁ
ホンダホンダホンダホンダシッティ~!
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最大市場のアジアが不振
地域別に見てみると(下の表)、アジアが世界市場の中心であることがわかります。
中でも最大市場は1900万台規模の販売台数をほこるインドで、世界市場の35%を占めています。
インドネシアと中国も合わせた上位3カ国で世界市場の6割を占めています。
2輪車の地域別市場規模(総需要5,336万台)
国 | 市場割合(%) |
---|---|
インド | 35 |
インドネシア | 12 |
中国 | 12 |
ベトナム | 6 |
パキスタン | 4 |
タイ | 3 |
アジアその他 | 7 |
欧州 | 3 |
北米 | 1 |
日本 | 1 |
その他 | 16 |
世界市場で見ると、日本市場はたった1%しかないのかぁ
その通りです。国内メーカーも主力は海外販売となっています。
2018年のインドでの2輪車販売は好調で、インド市場のみで約2,200万を記録し、世界の2輪車市場をけん引しています。
しかし、金融引き締めによる景気後退などの影響で、2019年の需要は前年比300万台減の1900万台と低迷し、そこに新型コロナウイルスの感染拡大が追い打ちをかけた状況です。
インドや東南アジアを含む世界中で工場の稼働停止や販売店の閉鎖が相次ぎ、各社厳しい状況に置かれています。アジア市場は徐々に回復が進むと思われますが、回復ペースは鈍く、当面は厳しい状況が続きそうです。
ちょっとひと休み。
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国内市場
一方、国内の2輪車市場は販売復調の兆しが見えつつあります。
下記の表をご覧頂きたいのですが、2020年1~11月の国内自動2輪車販売実績は、前年同期を上回っています。
2輪車販売台数(各年1~11月)👇
年 | 原付一種 | 原付二種 | 軽二輪 | 小型二輪 |
---|---|---|---|---|
2015 | 181,951 | 87,744 | 48,174 | 62,102 |
2016 | 148,821 | 94,971 | 43,409 | 58,513 |
2017 | 162,282 | 82,695 | 53,618 | 59,196 |
2018 | 132,735 | 97,881 | 53,534 | 58,376 |
2019 | 123,558 | 99,122 | 55,078 | 61,678 |
2020 | 114,890 | 95,553 | 69,603 | 62,337 |
※原付一種(~50cc)、原付二種(51~125cc)、軽二輪(126~250cc)
※原付一種、原付二種は出荷台数(日本自動車工業会調べ)
※軽二輪は届出台数、小型二輪は新規検査台数(全国軽自動車協会連合会調べ)
原付一種は減少していますが、自動二輪車(50㏄超)は前年同期を上回って好調を維持しています。
2020年の国内4社の販売傾向としては、春の緊急事態宣言(4~5月)で一気にバイクの需要は減りましたが、夏以降からは急速に需要が戻り、販売増に転じています。
コロナ感染防止のため公共交通機関を避け、2輪で通勤・通学する動きが先進国を中心に広がっていることも背景にあるようで、バイクの有用性や機動力が改めて認識されているという感じがあります。
また、若い世代の購買が増えており、とくに軽2輪が若者に人気です。
🏍若者に人気の軽2輪バイク↓
- カワサキ「Ninja ZX-25R」10代後半~20代の購入比率が高い
- スズキ「ジクサー250」「ジクサーSF250」7割が30代以下
- ホンダ「レブル250」65%が30代以下
レブルは軽2輪クルーザーですが、その他は軽2輪スポーツが人気のようですね。
上記のバイクは、2020年に若者に売れ行き好調だったバイクご紹介しただけなので、もちろん、人気の軽2輪バイクはこの他にもヤマハの「YZF-R25」「MT-25」やホンダの「CBR250RR」スズキの「GSX250R」など色々あります。
スタイリングや軽快な走りなど、商品に魅力があれば若い世代もしっかり購入してくれています。
2020年の販売数については、カワサキだけを見ても、緊急事態宣言の4~5月の販売は前年割れでしたが、6月から需要が増えて10月は小型二輪が前年同月比で120%、軽二輪は300%以上に伸び、一時の減少を完全にリカバリーし結果的には前年比でプラスです。
カワサキは大型バイクのカテゴリーも好調で、「Z900RS(CAFE)」がとくに50代前後のリターンライダーに人気があり、年間約4,000台以上売れています。
ホンダも125ccクラスの「CT125・ハンターカブ」がとくに40代以上の壮年男性に支持されています。
ちなみに、バイクのツーリングはソロ(1人)の方が多いのですが、近年はバイクで行くソロキャンプも流行っているので、やはりバイクは密を避けるいまの時代に合っているのかもしれません。
[ツーリング相手:1人83%、バイク仲間30%、友人・知人が19%(出所:日本自動車工業会)]
※バイクの各種データを知りたい方は日本自動車工業会が隔年で実施している「2019 年度二輪車市場動向調査」をご覧ください。バイカーにとっては意外とおもしろいかもしれません。
インドや東南アジアなどの新興国は先進国に比べて回復が遅く、1年(2021年)をかけてゆっくり回復していくと思われますが、国内については、各社、2021年度の上期(4~9月)まではフル操業が続きそうです。
2020年度の決算が楽しみです。
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