日本人はお金持ちだという勘違い/世界における日本の給与と物価水準ランキング/GDP(国内総生産)とBMI(ビッグマック指数)

業界研究

先日、海外を飛び回っている友人が久しぶりに帰国したので色々と話をしたのですが、その中で「日本って物価安いよねー」って。

たしかに100円ショップに行った海外の方々は「安くて信じられな~い」と喜んでますし、その他にも牛丼チェーンとか安さ至上主義のビジネスが日本では多いですよね。
最近は値上げのオンパレードですが、日本は長らくデフレが続いていたので、海外に比べて物価も安くなったのか~、だからそのぶん給料も上がらないのかな・・・

いや、ちょっと待てよ、そうは言っても日本は経済力が世界3位ですよね?
経済規模がそんなに大きいのだから、当然、私たち日本人は海外と比べると多くの給与を貰い、物価も高いのではないんですか?
経済に疎い私にとっては、「世界第3位の経済大国」の言葉だけで鼻高々だったんですが・・・

そんな気持ちで友人から海外の物価や給与について実情を聞いたのですが、なんか変だぞ・・・ポキッ!(ハナガオレルオト)

実際、私たち日本人の給与や日本の物価って世界と比べるとどれくらいなんでしょうか

そんな訳で、今回の記事では、私たち日本人の給与や物価が世界の中でどれくらいのレベルに位置しているのか、国の経済状況とあわせてその実情を見ていきたいと思います。

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「名目GDP」と「実質GDP」

まず始めに、日本が「世界第3位の経済大国」と言われているのは何に基づいているのでしょうか。
それは、経済指標の一つである国内総生産(GDP)で日本が世界3位であるからです。
ほとんどの方がGDPという言葉は聞いたことがあるワードだと思いますが、では「GDPを説明してください」と言われると、意外とうまく説明できません💦

GDP(Gross Domestic Product)とは「国内総生産」のことで、一定期間内に国内で新たに生み出されたモノやサービスの付加価値(原材料などの中間投入額は控除)の合計額のことを言います。
つまり、国が儲けたお金なので、GDPを見れば各国の景気や経済状況がわかるというわけです。
ちなみに、「国内で」なので、例えば日本企業が海外支店などの「国外で」生み出した付加価値はGDPには含まれません。
(長文になるので、国内外にいる日本人の所得の合計金額であるGNIや、国内外にいる日本人が生み出した付加価値の合計金額であるGNPなどについての解説は今回は省きます)

GDPの内訳を解説すると、日本の国内総生産の大半を占めているのが、日本で生活する人々が日常的に行う「消費」と国内にある企業が行う「投資」の合計金額である「民需」です。
民需に加え、政府が使ったお金である「政府支出」と輸出額から輸入額を差し引いた「貿易収入」 があり、これらを合計した金額がGDP(国内総生産)となります。

このGDPには2種類あり、単純に価値の総額で算出した「名目GDP」と、名目GDPから物価変動の影響を取り除いて算出した「実質GDPというものがあります。
名目GDPはその時点の経済規模を知るのに適していて、実質GDPは成長の度合いを時系列で比較するのに適しています

名目GDP(価値の総額)⇒経済規模を知るのに
実質GDP(名目GDPから物価変動の影響を取り除いて算出)⇒成長度合の比較に

名目GDP

それではまず、名目ベースのGDP(国内総生産)総額から実際に見てみましょう。

統計の処理の違いで、いくつかの統計(IMF国連世界銀行など)がありますが、どの統計であるかは表に記載してありますのでご確認ください。どれも基本的には各国が持っているデータがもとになっているのですが、その基準自体がバラバラなので補正をしています。参加国が違う点や、そのときの為替換算方法による違いに注意してください


[名目GDP 国別ランキングTOP10(2020年-IMF・国連)]

順位国名IMF名目GDP
(百万USドル)
国連名目GDP
(百万USドル)
1米国20,893,75020,893,746
2中国14,866,74014,722,801
3日本5,045,1005,057,759
4ドイツ3,843,3403,846,414
5英国2,709,6802,764,198
6インド2,660,2402,664,749
7フランス2,624,4202,630,318
8イタリア1,884,9401,888,709
9カナダ1,644,0401,644,037
10韓国1,638,2601,637,896
IMF統計・国連統計

表を見るとたしかに日本は経済規模が3位だということがわかります。
戦後復興から高度成長を経て目覚ましい発展を遂げた日本は、長らく米国に次ぐ世界第2位の経済規模を誇っていましたが、2010年からは中国に追い越され3位となっています。

しかし、思いのほか米国や中国に大きく離されているんですね。
米国と中国が世界経済にいかに大きな影響を及ぼしているかがよくわかるかと思います。

実質GDP

次に、実質GDPについて解説します。

前述した通り、GDPには「名目GDP」と「実質GDP」の2種類があり、実質GDPは名目GDPから物価変動の影響を取り除いて算出したものでしたね。
ここではそれぞれの違いをより理解するために以下の例で解説してみます。

それぞれの年に販売されたお菓子Aの数量と市場価格をもとに、名目GDPと実質GDPを試算してみます。
下の表をご覧ください。

お菓子A
の販売数量
お菓子Aの
市場価格
名目GDP実質GDP
基準年2020年
20201万個100円100万円
(1万個×100円)
100万円
(1万個×100円)
20212万個150円300万円
(2万個×150円)
200万円
(2万個×100円)
20222万個200円400万円
(2万個×200円)
200万円
(2万個×100円)

※ GDPは商品やサービスの付加価値の合計額であるため、本来は市場価格に含まれる原材料や流通費用などを差し引く必要がありますが、ここでは単純化のために市場価格そのものをGDPとして計算しています。

名目GDPは単純に「販売数量に市場価格を乗じて算出」しているのに対し、実質GDPは、名目GDPから物価変動(価格の変化)の影響を取り除いて算出するものなので、ここでは2020年のお菓子Aの市場価格である100円を基準として販売数量を乗じて算出しています。

このように名目GDPと実質GDPを試算して比べると、お菓子の価格上昇(物価上昇)の影響を受けている名目GDPは、物価変動の影響を取り除いて算出した実質GDPよりもその規模が大きく見えてしまうことがわかります。

さらに、2021年と2022年の名目GDPを見ると、お菓子の価格が上昇した分、2022年は経済規模が拡大しているように見えますが、実際は、販売数量はどちらも2万個で変わらないため、物価変動の影響を取り除いて算出した実質GDPでは、経済成長が全く見られないことになります。

このように、物やサービスの「価格変動」の影響でGDPの数値が変化してしまうことを避けるため、経済の成長力を知る上では「実質GDP」の方が重要視されているのです。

[実質GDP 国別ランキングTOP10(2020年-国連)]

順位国名実質GDP
(百万USドル)
実質GDP成長率(順位)
[2015年価格基準ベース]
1米国19,247,059▲3.40%( 98位)
2中国14,631,9822.35%( 21位)
3日本4,380,757▲4.59%(120位)
4ドイツ3,434,436▲4.57%(119位)
5英国2,882,116▲9.69%(177位)
6インド2,551,441▲7.25%(152位)
7フランス2,410,286▲7.86%(158位)
8ブラジル1,749,105▲4.06%(108位)
9イタリア1,744,732▲8.94%(171位)
10韓国1,623,895▲0.85%( 57位)
国連統計-213ヵ国中

名目GDPと比べると、8位以下が入れ替わっています。

IMF「世界経済見通し」

IMF(国際通貨基金)は2022年1月25日に「世界経済見通し(WEO)2022年1月改定見通し」を発表しました。
それによると、2021年の世界の経済成長率(実質GDPの伸び率)をプラス5.9%と推定し、2022年はプラス4.4%、2023にはプラス3.8%、と堅調な成長が続くものの徐々に鎮静化していくと予測しています。

[実質GDP成長率予測(IMF「世界経済見通し」2022年1月改定見通し)]

2021年
(推定)%
2022年
(予測)%
2023年
(予測)%
世界全体5.94.43.8
日本1.63.31.8
米国5.64.02.6
ユーロ圏5.23.92.5
中国8.14.85.2
インド9.09.07.1
IMF「世界経済見通し(WEO)」(2022年1月改定見通し)

IMFは、高インフレが前回の予想よりも長引いているとし、先進国による金融引き締めが新興国の資金フローや通貨、財政に及ぼすリスクについて指摘しています。
また、その他のリスクとして、新型コロナウイルスの新たな変異型が出現した場合の経済のさらなる混乱や、地政学的な緊張、気候変動による大規模な自然災害を挙げています。

日本については、残念ながら、諸外国に比べて今後も成長率は低くなっています。

平均給与(年収)

平均給与の世界ランキング

名目GDPと実質GDPから、なんとなく日本の経済規模や成長度合いの雰囲気をつかめたかと思います。
それでは、気になる私たちの給与について、世界における日本の順位を見てみましょう。

日本の平均給与(2020年)・・・OECD加盟国中22位

経済協力開発機構(OECD)の2020年データによると、日本の平均給与はOECD加盟国中22位先進国の平均値より低い状況です。

思っていたよりも低い!

下の平均給与のランキングをご覧ください。
[平均給与の国別ランキング(2020-OECD)]

2020年
順位
2020年
年間平均給与
(USドル)
過去単年の
年間平均給与
(USドル)
過去単年年間平均給与
の年/給与伸び率対象年
過去単年と
2020年の差
(USドル)
給与伸び率
(約%)
1米国69,39246,9751990年(30年前)+22,417148
2アイスランド67,48840,6951990年(30年前)+26,793166
3ルクセンブルク65,85447,6381990年(30年前)+18,216138
4スイス64,82451,2871990年(30年前)+13,537126
5オランダ58,82850,9481990年(30年前)+7,880115
6デンマーク58,43042,1221990年(30年前)+16,308139
7ノルウェー55,78031,9421990年(30年前)+23,838175
8カナダ55,34240,0701990年(30年前)+15,272138
9オーストラリア55,20639,8751990年(30年前)+15,331138
10ベルギー54,32743,2721990年(30年前)+11,055126
11ドイツ53,74540,1911991年(29年前)+13,554134
12オーストリア53,13242,5521990年(30年前)+10,580125
13アイルランド49,47426,6641990年(30年前)+22,810186
(OECD平均)49,16536,9411990年(30年前)+12,224133
14英国47,14732,6751990年(30年前)+14,472144
15スウェーデン47,02028,8391990年(30年前)+18,181163
16フィンランド46,23035,0851990年(30年前)+11,145132
17フランス45,58134,7801990年(30年前)+10,801131
18ニュージーランド45,26931,0581990年(30年前)+14,211146
19韓国41,96021,8301990年(30年前)+20,130192
20スロベニア41,44524,4861995年(25年前)+16,959169
21イスラエル39,32229,5981995年(25年前)+9,724133
22日本38,51536,8791990年(30年前)+1,636104
23スペイン37,92235,7151990年(30年前)+2,207106
24イタリア37,76938,8931990年(30年前)▲1,12497
25ポーランド32,52716,5561995年(25年前)+15,971196
26リトアニア31,8118,4541995年(25年前)+23,357376
27エストニア30,7209,1111995年(25年前)+21,609337
28チェコ共和国29,88514,0731995年(25年前)+15,812212
29ラトビア29,8769,9411996年(24年前)+19,935301
30ポルトガル28,41024,9921995年(25年前)+3,418114
31ギリシャ27,20720,8541995年(25年前)+6,353130
32チリ26,72915,9481996年(24年前)+10,781168
33ハンガリー25,40914,7171995年(25年前)+10,692173
34スロバキア共和国23,61910,2861994年(26年前)+13,333230
35メキシコ16,23014,4551990年(30年前)+1,775112
OECD-2020平均賃金

※OECD加盟38ヵ国のうちトルコ、コロンビア、コスタリカを除く35ヵ国。

まず、上位国の給与について見ていくと、年間の平均給与1位は米国の69,392ドルです。
日本は38,515ドルなので、日本よりも3万ドル以上も年収が多いのです。
これだけ大きな差があるとは驚きです。
ただ、米国はGAFAやマイクロソフトなど巨大企業が多いので、納得の結果かもしれません。
(GAFA・・・Google、Apple、Meta(旧・Facebook)、Amazon)

米国の他にもアイスランド、ルクセンブルク、スイスの3ヵ国が平均年収6万ドル以上あるようです。あまり経済大国のイメージもなかったので正直びっくりです。

平均給与2位のアイスランドは水産業や観光業などが産業の主力で、2020年の1人あたり名目GDP(IMF統計)は世界8位の59,643ドルです。
(一人あたりGDPについては次の章で解説しています)

平均給与3位のルクセンブルクは金融サービス業を柱とする国で、2020年の1人あたり名目GDP(IMF統計)は世界1位の116,921ドルです。1993年から1位を継続しています。
実質GDPについては成長率はマイナスでしたが、近年は毎年3%以上をキープしています。

平均給与4位のスイスは2020年の1人あたり名目GDP(IMF統計)は世界2位の87,367ドルです。
1人あたり名目GDPは常に世界上位で、2015年から2位を維持しています。

平均給与5万ドル以上の国は上位4ヵ国も含め12ヵ国もありますが、正直意外な国が多く感じました。

ちなみに、OECD加盟国の平均は49,165ドルなので、日本(38,515ドル)は加盟国平均よりも年間1万ドル以上も給与が低いという残念な結果となっています。

アジアで見てみるとどうでしょうか。
日本はなんと韓国よりも下です。
韓国は30年前に比べると92%増で給与が2倍になっています。
日本人よりも韓国人の方が高い給与を貰っているのです。

日本は物価もそれほど上がっていないため実感することは難しいですが、こうして上の表を見ると、年々上昇してきた諸外国と比べ、経済大国のわりに日本人の給料の低さが際立っています。

それでは、同じく経済大国である中国についてはどうでしょうか。
中国についてはOECDに加盟していませんが、平均年収は110万円〜130万円と言われています。
日本の4分の1程度です。
GDP世界2位としては少なく感じると思いますが、中国は経済格差が非常に大きく、少数の富裕層がほとんどの富を支配し低所得者層が多数という構図なので、平均年収としては低くなっています。

日本より順位の低い国としては、スペインやイタリア、チリ、ハンガリー、メキシコなど、経済や国内情勢が安定していない国が多いようです。

経済協力開発機構(OECD)データ👇

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日本の給与は30年間低迷

前述の表で給与の伸び率の欄を見てみると、残念ながら他国と比べ日本の給与の伸びは長年低迷しているということがよく分かります。

日本は30年前と比べ、年収でたった4%増の1,636ドルしか増えていません

イメージを膨らませるために仮に1ドル110円(2021年3月当時)の為替レートで換算してみると、年間約17万9,960円の増加となります。
ようするに30年前に比べて月収が1万5,000円程度しか増えていないということになります。
月の給与が1万5,000円も増えていれば良いのではと感じるかもしれませんが、これだけの長期間にわたり労働者の給与の成長が横ばいな先進国は、特別な情勢を除外すれば日本だけです。

日本の平均給与が2020年に38,515ドルであったのに対し1996年には既に38,087ドルだったので、24年間ほぼ給与が変わっていないというのが実情です。

日本の異常な低迷は一目瞭然で、たとえば米国の給与は30年前に比べ148%で22,417ドル(先ほどのレート1ドル110円換算で年収が約247万円)増加、韓国は約2倍となる192%で年収が20,130ドル(約221万円)増加、OECD加盟国の平均でも133%で年収が12,224ドル(約134万円)増加しています。
リトアニアやエストニア、ラトビアなどについては、ソビエト連邦からの独立という特異な情勢下ではありましたが、独立当時と比べると300%以上でなんど給与が3倍になっています。


日本はこうした低迷が続いている結果、平均給与(年収)が諸外国に追い抜かれ、世界22位となっているのです。

「一人あたり名目GDP」と「一人あたり購買力平価GDP」

一人あたりGDP

国の経済の規模を単純に比較する場合には前述したとおり名目GDPを見ればいいですし、経済の成長度合を比較する場合には実質GDPが適しておりますが、いづれも国の経済を測る指標であるため、国民一人ひとりについての経済的豊かさがわかりませんでした。

そこで国民の生活の豊かさを測る経済指標として適当なのが、GDPを人口で割った数値である「一人あたりの国内総生産(GDP)になります。

それでは実際に、一人あたりGDPを見てみましょう。


[一人あたり名目GDP 国別ランキングTOP38(2020年)IMFと国連の統計]

順位国名IMF
一人あたりGDP
(USドル)
OECD
平均給与
の順位
1ルクセンブルク116,9213
2スイス87,3674
3アイルランド85,20613
4ノルウェー67,3267
5米国63,3581
6デンマーク61,1546
7シンガポール59,795
8アイスランド59,6432
9カタール54,185
10オーストラリア52,9059
11オランダ52,4565
12スウェーデン52,12915
13フィンランド48,78616
14オーストリア48,59312
15香港46,657
16サンマリノ46,282
17ドイツ46,21611
18ベルギー44,68810
19イスラエル44,18121
20カナダ43,2958
21ニュージーランド41,16518
22英国40,39414
23フランス40,29917
24日本40,08922
25アラブ首長国連邦38,661
26アンドラ36,631
27マカオ35,621
28プエルトリコ32,645
29韓国31,63819
30イタリア31,60424
31マルタ28,955
32台湾28,358
33スペイン27,17923
34キプロス26,785
35ブルネイ26,061
36バハマ25,734
37スロベニア25,54920
38バーレーン23,590
IMF-195ヵ国中
順位国名国連
一人あたりGDP
(USドル)
OECD
平均給与
の順位
1リヒテンシュタイン180,227
2モナコ173,696
3バミューダ123,945
4ルクセンブルク117,1823
5ケイマン諸島95,191
6スイス86,9194
7アイルランド86,25113
8ノルウェー66,8717
9アイスランド63,6442
10米国63,1231
11デンマーク61,4776
12シンガポール58,114
13オーストラリア55,8239
14グリーンランド55,139
15スウェーデン53,57515
16オランダ53,3345
17カタール50,815
18英領ヴァージン諸島49,357
19フィンランド48,68516
20オーストリア48,10612
21イスラエル47,03421
22香港46,611
23ドイツ45,90911
24サンマリノ45,832
25ベルギー45,02810
26ニュージーランド43,97218
27カナダ43,5608
28英国40,71814
29日本39,99022
30フランス38,95917
31マカオ37,474
32アンドラ37,072
33アラブ首長国連邦36,285
34プエルトリコ36,052
35ニューカレドニア34,006
36マルタ33,771
37韓国31,94719
38イタリア31,23824
国連-213ヵ国中

この一人あたりGDPを見ると、名目(実質)GDP3位であった日本は40,089ドルで世界で24位(IMF統計)となっています。
名目(実質)GDP3位の中国は10,511ドルで64位(IMF統計)となります。
経済規模が大きい中国と日本ですが、国民一人ひとりの生活の豊かさを見ると決してそうではないのです。

つまり、名目(実質)GDP上位であった中国と日本のGDPは、人口の多さによって経済大国としての地盤が作られているとも言えます。
ぶっちぎり1位の名目(実質)GDPを誇る米国も同様に、一人あたりGDPでは63,358ドルで5位(IMF統計)に下がり、やはり人口の多さによる影響があるという事がわかります。
GDPを一人当たりGDPと人口の掛け算だと捉えれば、これら3ヵ国の名目(実質)GDPは人口によってさらに大きくなっていたと言えるのです。

名目GDPや実質GDPで世界3位の日本が、平均給与では世界22位(OECD加盟国中)であることに驚いたかと思いますが、この一人あたりGDPで「国民一人ひとり」に目を向けてみると、まだ納得できるのではないでしょうか。

IMFの統計によると、日本の一人あたりGDPは、1位のルクセンブルクに比べ34.3%、米国の63.3%、アジアにおいても1位のシンガポールの67%でしかありません。
韓国については日本よりも低いですが、成長率が高いので抜かれるのは時間の問題です。

2018年から2000年における一人あたり名目GDPの成長率は、中国が12.9%、日本が0.7%、韓国が5.7%、アメリカが3%で、日本が最も低くなっています。
2021年以降もこのままの成長率で伸びていくと仮定した場合、韓国は2030年に日本を追い抜きます。
中国については、2036年に日本を追い越し、2044年に米国を追い越す成長率となります。

IMF(国際通貨基金)の世界経済見通し(WEO)では、「先進国」(advanced coutries)というグループ分けをしており、日本も先進国のグループには入ってはいるものの、このように一人あたりGDPを見てみると、世界における日本の地位はかなり低くなっているのが現状です。

ちなみに、eurostat(ユーロスタット)の記事によると、一人当たりGDPのランキング上位には、ルクセンブルクやシンガポールなど人口の少ない国が多く含まれていますが、小国の特殊要因が影響している可能性があり、例えば、ルクセンブルクの一人当たりGDPが大きい要因としては、近隣諸国からの通勤労働者が多いことが挙げられるそうです。

ところで、現在は一人あたりGDPが世界24位の日本ですが、実はこの地位はしばらく前までは、もっとずっと高かったんです。

下の表をご覧ください。
日本の一人あたりGDPの推移になります。

[日本の一人あたりGDP推移1990-2020(IMF統計)]

順位IMF
一人あたりGDP
(USドル)
1990825,896
1991429,512
1992432,069
1993336,425
1994339,953
1995344,210
1996339,164
1997435,651
1998632,437
1999336,623
2000239,173
2001534,411
2002632,832
20031135,410
20041438,307
20051637,819
IMF統計
順位IMF
一人あたりGDP
(USドル)
20062136,022
20072435,847
20082439,992
20091741,470
20101845,136
20111848,761
20121449,175
20132740,935
20142838,523
20152735,006
20162439,411
20172738,903
20182739,819
20192640,690
20202440,089
IMF統計


日本は2002年まで世界上位(TOP10)をキープしており、なんと2000年にはルクセンブルクの49,183ドルに次ぐ世界第2位でした。
ちなみに、この時の米国は5位で36,313ドルでしたので、当時は日本の方が米国よりも7%ほど高かったのです。

そこから徐々に順位をおとしましたが、2012年には49,175ドルと回復し、順位も14位まで上昇しました。
2012年時点では、2020年よりも1万ドルほど高かったのです。
この2012年の49,175ドルという数値は、仮に2020年に当てはめたとすると、順位が13位になる数値です。

しかし、翌年の2013年には、8,240ドル減の40,935ドルで順位も27位に下がり、その傾向が2020年まで続いているという状況です。
ここ20年の一人あたりGDPを見ても、2000年の39,173ドルから2020年の40,089ドルへと変化しただけの状態なので、ほぼ成長していないということがよくわかります。

しかし、2000年に2位であった日本はなぜ24位まで下がってしまっているのでしょうか

その要因としては、世界が成長するなかで日本が全く成長しなかったことに付け加え、円安が進んだからだと考えられています。

とくに、2012年以降の低迷について見てみると、第2次安倍政権によるアベノミクスの影響だと考えるのがしっくりきそうです。

アベノミクス

アベノミクス
2012年12月26日に始まった第2次安倍政権において安倍首相(当時)が表明した「3本の矢」を柱とする経済政策。
最大目標を経済回復と位置づけ、
①大胆な金融政策(デフレ脱却を目指し、2%のインフレ目標が達成できるまで無期限の量的緩和を行うこと)②機動的な財政出動(東日本大震災からの復興、安全性向上や地域活性化、再生医療の実用化支援などに充てるため、大規模な予算編成を行うこと)、③民間投資を喚起する成長戦略(成長産業や雇用の創出を目指し、各種規制緩和を行い、投資を誘引すること)という3本の矢によって、日本経済を立て直そうという計画です。

2012年の12月に導入されたアベノミクスの軸となった金融緩和政策は、金融機関が保有していた国債を大量に買い入れ、マネタリーベースを2年間で2倍に増やすというものでした。
通常、市場に流通するお金が増加すると通貨の価値は下がります
これが円安を引き起こし輸出に有利に作用するので、このアベノミクスにより日経平均株価が上昇しました。

現に、円相場は2013年3月、日銀の黒田総裁が就任する前の時点では1ドル90円台前半でしたが、こうした中、「黒田バズーカ」と呼ばれた市場に大量の資金を供給する大規模な金融緩和策を打ち出したことをきかっけに、円相場は一転して円安方向に動き、2015年6月には、当時としてはおよそ12年半ぶりの水準となる1ドル125円台まで円安ドル高が進みました。

しかし一部の専門家は「この円安・株高の流れが、長期的な賃金成長の横ばいを引き起こした要因だ」と分析しています。
政府や企業が安易な経済的後押しに依存せず、技術革新や生産性の向上を優先していれば、円高を支えることができ、それが賃金の成長につながったというのです。

一方では、「円安を輸出市場に活かし切れていない」という指摘もありました。
財務省貿易統計のデータによると、2012年以降は過去に比べて爆発的に輸出が伸びたというわけではなく、アベノミクス以前より減少した年もあります
さらに、輸入総額が輸出総額を上回った年も少なくありませんでした。

[財務省貿易統計 年別輸出入総額(確定値)]

暦年輸出(円)輸入(円)
200675,246,173,39267,344,293,072
200783,931,437,61273,135,920,427
200881,018,087,60778,954,749,926
200954,170,614,08851,499,377,779
201067,399,626,69660,764,956,840
201165,546,474,94868,111,187,178
201263,747,572,21570,688,631,840
201369,774,192,95081,242,545,171
201473,093,028,31185,909,112,733
201575,613,928,86278,405,535,793
201670,035,770,38366,041,973,885
201778,286,457,04875,379,231,107
201881,478,752,67482,703,304,395
201976,931,664,91578,599,509,951
202068,399,121,04768,010,831,589
財務省貿易統計

また、「物価が安いのであれば所得が上がらなくても問題はない」という見方もあると思いますが、物価が安くなるほど労働者への負担(低賃金・重労働など)は重くなります。
そもそも、賃金が上がらない状態が長期化すれば、労働者の向上意欲は減少しますよね。

アベノミクスが成功だったのか失敗だったのかは現在も評価が真っ二つにわかれています。
ただ、超円高・株安から日本を救ったという功績は評価に値するものの、それによる弊害で日本の国際市場競争力が後退し、労働者が国際的に見て貧しい立場に追い込まれたということは、前述の「日本の一人あたりGDPの推移」や「平均給与」を見ても言えそうです。

近況(円相場が約20年ぶりの円安水準に)

余談ですが、本日(2022年4月13日)の外国為替市場、円相場はついに1ドル126円台まで値下がりし、およそ20年ぶりの円安水準となりました。
2002年5月以来、19年11か月ぶりの円安水準です。

これは、日銀の黒田総裁が「現在の強力な金融緩和を粘り強く続ける」などと発言したことで、日米の金融政策の違いや金利差の拡大が投資家の間で改めて意識され、円を売って、より利回りが見込めるドルを買う動きが一段と強まったものです。
また、イギリスで発表された先月の消費者物価指数が市場予想を上回る水準となったことで、欧米でインフレを抑え込むため利上げが早まるという見方が出たことも、円を売る動きにつながったようです。

1年前の昨年3月には1ドル110円前後で取り引きされていましたが、昨年10月以降、原油高に伴うインフレへの懸念からアメリカが金融引き締めに向かうという見方が広がって円安ドル高が進み、昨年11月には4年8か月ぶりに1ドル115円台をつけました。
そして、今年に入ると、2月下旬のロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受け、原油をはじめとする資源価格が一段と高騰。
先月、アメリカの中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)が利上げを急ぐ姿勢を強調するのとは対照的に、日銀は金融緩和を続ける姿勢を明らかにし、日米の金利差の拡大が強く意識される形となりました。
日銀が先月、長期金利の上昇を抑えるため、一定の期間、指定した利回りで国債を無制限に買い入れる「連続指値オペ」と呼ばれる措置に踏み切ったことで、円安ドル高が加速し、円相場は先月上旬から下旬にかけてわずか3週間で10円程度も値下がりしていました。

円安は輸出企業にとっては業績プラスとなりますが、日本は食糧やエネルギーを輸入に頼っており、私たちの生活へのマイナスな影響がとても気になります。
すでに様々なところで値上げが多発していますが、とくに電気やガスなど光熱費がさらに追加で値上がりする可能性もありますし、ガソリンや、エネルギーを使うさまざまなサービスの価格についても同様です。
これほどの円安なら、コロナ前であれば大勢の外国人が訪れてとくにサービス業にとってはプラスだったと思いますが、コロナ禍でありサービス業を押し上げる効果も期待できそうにありません。

購買力平価GDPと「一人あたり購買力平価GDP」

前述の一人あたり名目GDPでは、国民の生活の豊かさについて見てきました。
ただ、この一人あたり名目GDPでは、それから得られる物質的な幸福度を十分に把握できないという弱点があります。

それは、各国の通貨が異なるため、国際比較には為替レートでドルに換算するしかなく、国ごとの物価の違いが反映されていないという点です。
前述の一人あたり名目GDPでは、日本は2000年には世界で2位だったと示しましたが、たまたま円高で数値が大きくなっていたのかもしれず、日本人が豊かだったとは言い切れないのです。

まず、為替レートというのは、投機などの影響で通貨が過大あるいは過小評価されることがあるので、通貨が過小評価されるとドル建ての一人あたりGDPは大きく低下してしまいます。
また、GDPが同じでも、物価の高い国より物価の低い国のほうが、実質的な生産額や所得額は大きいはずなので、国ごとの物価の違いを考慮した方が望ましいと言えます。

このような市場で決まる為替レートで換算する方法の弱点を克服する通貨の換算方法として購買力平価(PPP)があります。
購買力平価とは、ある国で購入する財・サービスの価格が別の国で購入する場合にいくらの金額になるかの比率で、すなわちそれぞれの通貨が有する購買力です。
買える財やサービスの量が等しくなるように計算して求められます。

例えば、おにぎり1個が日本で100円で売られていて、米国では1ドルで売られていた場合、100円と1ドルで同じものが買えるということなので、100円と1ドルの購買力(財やサービスを購入することができる能力)は等しい、つまりドルと円は1ドル=100円がつり合いが取れている、という理論が購買力平価です。

通常の為替レートは外国為替市場で取引される異なる国との間の通貨の交換比率を表しますが、この購買力平価は異なる国との間の財・サービス価格の交換比率を表す為替レートということです。

この通貨の購買力に着目したレートである購買力平価で通貨を換算した方が、外国為替市場の乱高下による影響を取り除いた実態に近い経済の姿を映し出すので、一人あたりGDPについてより意味のある比較ができるとされています。

購買力平価(PPP)
「為替レートは2国間の物価上昇率の比で決定する」という観点により、インフレ格差から物価を均衡させる為替相場を算出している。各国の物価水準の差を修正し、より実質的な比較ができるとされている。

それではまず、各国の為替レート(対ドルレート)の代わりに、この購買力平価を利用して対ドル換算した、購買力平価GDP(購買力平価でGDPを換算)から見てみましょう。


[ 購買力平価GDP 国別ランキングTOP10(2020年-IMFと世界銀行)]

順位国名IMF
購買力平価GDP
(百万USドル)
世界銀行
購買力平価GDP
(百万USドル)
1中国24,191,30024,274,131
2米国20,893,75020,893,746
3インド8,974,7408,972,134
4日本5,312,3005,251,498
5ドイツ4,536,5204,516,935
6ロシア4,100,4804,133,084
7インドネシア3,301,9103,300,949
8ブラジル3,153,1503,152,233
9フランス3,016,8803,147,996
10英国2,961,8903,082,002

一番初めに見た「名目GDP」と比べると、為替レートで換算するのか購買力平価(PPP)で換算するのかでこんなに順位が変わるんだね。

名目GDPと比較すると中国と米国の1位が入れ替わりました。

購買力平価GDPではすでに2000年に日本を上回っていた中国は、今や米国を上回る世界一の経済規模となり、日本の約4.55倍です。

名目GDP6位であったインドが3位に浮上し、日本は4位。
1980年のインドは日本の約3分の1に過ぎませんでしたが今は日本の約1.69倍です。

ロシアやインドネシア、ブラジルがトップ10入りし、イタリアやカナダ、韓国がランク外です。

もちろん、GDPが拡大したとはいえ、中国やインドは日本の10倍以上の人口を擁しています。
したがって、所得水準や豊かさを示す指標としては、やはり、人口要因を取り除いた1人あたりGDPで比較するのがより適切です。

それでは、一人あたりの購買力平価GDPを見てみましょう。
これは、その国で生産されたすべての最終的な財やサービスの購買力平価(PPP)を、その年の平均人口で割ったものです。

[ 一人あたり購買力平価GDP 国別ランキングTOP38(2020年-IMFと世界銀行)]

国名IMF
一人あたり
購買力平価GDP

(USドル)
IMF
一人あたり
名目GDP
の順位
1ルクセンブルク117,9841
2シンガポール98,5127
3カタール96,6079
4アイルランド95,9943
5スイス73,2462
6アラブ首長国連邦71,13925
7ノルウェー65,8414
8米国63,3585
9ブルネイ62,30635
10サンマリノ60,49016
11香港59,65615
12デンマーク59,1366
13オランダ57,66511
14アイスランド56,0668
15台湾55,85632
16オーストリア55,45314
17マカオ54,94327
18ドイツ54,55117
19スウェーデン54,48012
20アンドラ51,98926
21オーストラリア51,78110
22ベルギー51,18018
23バーレーン50,56738
24フィンランド49,80613
25カナダ48,75920
26サウジアラビア46,48944
27フランス46,32523
28韓国44,75029
29英国44,15422
30マルタ43,65631
31クウェート43,25041
32ニュージーランド42,44621
33日本42,21224
34イスラエル41,27119
35イタリア41,26830
36チェコ40,79340
37キプロス40,00734
38スロベニア39,37837
IMF-195ヵ国中
順位国名世銀
一人あたり
購買力平価GDP

(USドル)
国連
一人あたり
名目GDP
の順位
1ルクセンブルク118,5044
2シンガポール98,48312
3アイルランド95,2377
4カタール89,93517
5バミューダ80,8003
6スイス71,7616
7ケイマン諸島71,5675
8アラブ首長国連邦66,74733
9ブルネイ65,58841
10サンマリノ63,42024
11米国63,41410
12ノルウェー63,2888
13マカオ60,87331
14デンマーク60,55211
15オランダ59,33416
16香港59,21222
17台湾55,89639
18オーストリア55,64920
19アイスランド55,2259
20スウェーデン54,93015
21ドイツ54,26423
22ベルギー52,62725
23オーストラリア52,39713
24フィンランド50,81119
25カナダ48,09127
26クウェート47,28945
27サウジアラビア46,74253
28フランス46,71230
29英国45,85328
30ニュージーランド44,21326
31バーレーン43,74055
32韓国43,31937
33マルタ42,64036
34イスラエル42,39121
35チェコ42,04949
36イタリア41,89038
37日本41,73329
38スロベニア40,12443
世銀-195ヵ国中


少し前に、「一人当たりGDPで日本は韓国に抜かれた」と話題になりましたが、この一人あたり購買力平価GDPを見るとそれがわかります。
日本は2019年に韓国に追い抜かれて33位、韓国は28位となっています。

為替レートでドル換算した一人当たり名目GDPでは、日本(IMF統計24位)はまだ韓国(IMF統計29位)より豊かであると錯覚しがちでしたが、購買力平価換算の一人あたり購買力平価GDPで実際の豊かさを比較すれば、たしかに現時点では韓国の方が日本よりも豊かだと言えるのです。

2018年から2000年における、一人当たり購買力平価GDPの成長率は、中国が9.4%、日本が2.3%、韓国が5.3%、アメリカが3%となっています。
2021年以降においても4ヵ国の一人当たり購買力平価GDPがこの成長率で伸びていくなら、中国(IMF統計17,104ドルの78位)が日本(IMF統計42,212の33位)を追い越すのは2037年、中国がアメリカ(IMF統計63,358ドルの8位)を追い越すのは2045年となることが予測できます。

IMF(国際通貨基金)のHP👇

国際連合のHP(経済社会学科-統計課)👇

世界銀行のHP👇


物価水準

それでは次に、日本の物価が世界の中でどれくらいの水準に位置しているのかについて見ていきたいと思います。

ビッグマック指数(BMI)世界ランキング

英国の経済誌「エコノミスト(The Economist)」が定期的に更新している「ビッグマック指数(BMI)」というものがあります。
BMIは世界のビッグマックの価格を比較することで、各国の経済力や物価水準、為替相場などを測定する経済指標となり、通貨が正しいレベルにあるか(通貨の価値)を算出します。

マクドナルドのビッグマックは、全世界でほぼ同一の品質や規格・サービスで販売されており、それぞれの国の経済状況によってその単価が決定されている為、各国のビッグマックの価格を比較すれば購買力が測れる、つまり、一物一価の法則により、その通貨で財やサービスを購入することができる能力が測れる、という考え方を基に考案されたのがこのビッグマック指数です。
(BMIでは、ビッグマックが安く買える国ほど国際的な購買力は低いとされています)

それでは、世界のビッグマック価格・指数ランキング表(2022年1月)を見てみましょう。

順位価格
(円)
価格
(USドル)
価格
(現地通貨)
BMI
(%)
GDP調整後
BMI
(%)
1スイス8046.986.50+20.16+2.86
2ノルウェー7376.3957.00+10.03+7.06
3米国6695.815.810.000.00
4スウェーデン6675.7954.00▲0.43+8.08
5ウルグアイ6255.43239.00▲-6.58+39.76
6イスラエル6165.3517.00▲-7.92+6.37
7カナダ6135.326.77▲-8.38+6.60
8ベネズエラ5835.0623.00▲12.87
9ユーロ圏5714.954.42▲14.72+3.51
10デンマーク5564.8232.00▲17.02▲15.72
11英国5554.823.59▲17.10▲1.21
12アラブ首長国連邦5334.6317.00▲20.34▲3.68
13ニュージーランド5304.607.00▲20.87▲6.31
14オーストラリア5204.516.40▲22.39▲16.26
15シンガポール5034.365.90▲24.90▲22.98
16ブラジル4974.3122.90▲25.77+22.90
17アルゼンチン4944.29450.00▲26.25+19.69
18スリランカ4784.15840.00▲28.57+22.74
19クウェート4764.131.25▲28.97▲0.67
20コスタリカ4754.122,650.00▲29.02+10.80
21チェコ4734.1189.00▲29.34▲1.44
22サウジアラビア4614.0015.00▲31.19▲1.17
23バーレーン4583.981.50▲31.52▲5.08
24チリ4473.883100.00▲33.19+3.23
25タイ4433.84128.00▲33.83+9.09
26中国4423.8324.40▲34.02+4.76
27韓国4403.824,600.00▲34.32▲15.56
28ニカラグア4353.78134.00▲34.95+14.17
29ホンジュラス4173.6289.00▲37.77+8.62
30カタール4113.5713.00▲38.55▲34.33
31クロアチア4063.5223.67▲39.33▲7.16
32ポーランド3963.4414.08▲40.81▲11.14
33日本3903.38390.00▲41.74▲30.40
34グアテマラ3903.3826.00▲41.81▲0.76
35ペルー3873.3612.90▲42.14▲3.43
36パキスタン3853.34590.00▲42.47+1.83
37メキシコ3853.3469.00▲42.49▲6.49
38コロンビア3793.2912,950.00▲43.46▲4.80
39レバノン3753.2670,000.00▲43.96
40ハンガリー3563.09982.00▲46.77▲20.23
41ベトナム3513.0569,000.00▲47.57▲9.73
42ヨルダン3452.992.12▲48.53▲12.21
43オマーン3442.991.15▲48.59▲21.63
44モルドバ3332.8952.00▲50.28▲15.42
45香港3252.8222.00▲51.44▲45.01
46フィリピン3212.79142.00▲52.05▲17.26
47エジプト3122.7142.50▲53.44▲19.91
48台湾3112.7075.00▲53.59▲38.51
49アゼルバイジャン3052.654.50▲54.41▲22.18
50南アフリカ2972.5839.90▲55.61▲25.46
51インド2932.55190.00▲56.18▲23.08
52ウクライナ2802.4369.00▲58.13▲28.11
53ルーマニア2772.4010.60▲58.65▲36.02
54マレーシア2752.399.99▲58.92▲34.57
55インドネシア2722.3634,000.00▲59.31▲30.28
56トルコ2151.8624.99▲67.94▲47.99
57ロシア2011.74135.00▲69.99▲52.13

※2022年1月時点のデータ(1ドル=115.23円)

ビッグマック指数(エコノミストのHP)👇

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世界における日本の「物価水準」

上の表から、日本と海外の物価水準を比較してみましょう。

ビッグマック価格のトップ3は、1位はスイスで6.98ドル(約804円)、2位はノルウェーで6.39ドル(約737円)、そして3位はBMI基準となる米国で5.81ドル(約669円)です。
これに対し、日本は3.38ドル(約390円)とかなり低く、順位も33位となっています。

さらに、シンガポール4.36ドル(約503円)やタイ3.84ドル(約443円)、中国3.83ドル(442円)や韓国3.82ドル(約440円)など、なんとアジア諸国と比べても日本の物価水準は低いのです。

先進諸国から見るとたしかに日本の物価が安いという事がわかりました。

しかし、なぜ日本のビッグマックの価格はこれほど安いのでしょうか

私が知るかぎり、たとえば日本の不動産価格は決して安くありませんし、材料費であっても電気代やガス代も高いはずです。

利益は全体の付加価値のごく一部にしかならないので、利益水準の違いでは、日本のビッグマックの価格が安い理由の説明はできません。
残るのは、やはり付加価値の最大の構成要素である「人件費」になります。

実際、購買力を調整したビッグマックの価格と最も相関関係が強い要素が何であるのかを分析すると、「最低賃金」だという答えが導き出されます。

通常、一人あたりのGDP(国内総生産)という国全体の生産性に対して、購買力調節後の最低賃金の水準が低く、かつ、最低賃金(もしくはそれに近い水準)で働いている労働者の割合が高いほど物価が低くなります。

その観点からいうと、日本は1人当たりGDPに対する最低賃金の水準がヨーロッパに比べて異常に低いです。
米国も同じように低いのですが、アメリカは1人あたりGDPが欧州よりかなり高い水準なので1人あたりGDPに対する比率が低くなっても当然といえます。
また、米国では最低賃金で働いている人の割合は日本に比べて非常に少ないです。
それに対し、最低賃金で働く日本の労働者の割合は過去10年で倍増し、2020年のデータでは14.2%に達している状況です。

結局、日本では最低賃金が極めて低く、安い賃金で人が雇えるので、ビッグマックを安い価格でも提供できているのです。

これらは、前述した「日本の平均給与の異常な低さ」を見ても納得できるのではないでしょうか。

「通貨の価値」ビッグマック指数(BMI)を見る

BMI(ビッグマック指数)は、一物一価の法則(厳密には成立しない購買力平価)に基づいて、比較する通貨が過小評価されているのか過大評価されているのかを判断するために使われます。
つまり、比較する通貨の割安・割高が測れる指数です。

たとえば、日本で売られているビッグマックの価格が390円、米国で売られている価格が5ドルであったとします。
この場合、ドル-円の為替レートは1ドル=78円(390円÷5ドル=78)が妥当という事になります。
この時、実際の為替レートが110円であった場合は、(78円÷110円)-1×100=-29.09で、BMI(ビッグマック指数)は-29.09%となります。
これは、現在のドルに対して円が29.09%過小評価されていることを示しています。
よって、ビッグマック指数だけを見れば、今後「円」は強く(円高)なるだろうという見方になります。
また、物価は経済成長率が影響するので、仮に日本の経済成長率が上昇するのであればインフレが進み、ビッグマック価格は今後高くなるだろうという見方もできます。
現に、過去30年間のGDPはアメリカが右肩上がりに対して日本はほぼ横ばいでしたが、ビッグマック価格についてもほぼ同じ動きをしています。

上の表でBMIを見ると、日本は-41.74%ということなので、つまり、ドルに対して円が41.74%過小評価されていることを示しています。

ビッグマック指数は、為替レートを理論的に解釈するためのツールに過ぎないものの、購買力平価(PPP)は為替レートを解釈する判断材料の一つであり、加えてビックマックは世界でほぼ同商品で販売されていて各国の物価水準や為替相場を比較できるので、これらを測定する経済指標のひとつとして注目されています。

GDP調整後ビッグマック指数

BMI(ビッグマック指数)は、人件費が安く貧しい国の方が裕福な国よりビッグマック価格が安くなるという批判があります。
そこでエコノミストはそれに対応するため、GDPで調整したビッグマック指数も公表しています。
一人あたりGDPで調整したビッグマック指数であるため、エコノミストは現在の通貨の公正価値をより示す指数になっているとしています(上の表の一番右列に記載)。



長々と記述しましたが、いかがだったでしょうか。
経済大国3位の日本について、少しイメージが変わったのではないでしょうか。

当初は、世界における日本の給与や物価水準についてだけサクッと執筆するつもりでしたが、結局のところ、解説するうえでGDPなどの経済指数に触れるしかなく話が長くなってしまいました。
経済はとても複雑です。今回は触れませんでしたが、GNIやGNP、物価についてはインフレ率や消費者物価指数など、まだまだ関連する指標が色々とありますので、ぜひ他で調べて頂けたらと思います。

最後までご覧頂き有難うございました。

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