5G/多くの業界に経済効果が波及/5G業界参入企業

業界研究

5Gとは第5世代移動通信システムのことで、2020年から普及が本格化しました。
移動通信システムの規格は約10年ごとに世代交代してきており、5Gは次世代の通信インフラとして、そのビジネスチャンスは幅広い領域へ広がっています。

5Gの技術的な面についての記事は多くありますので、この記事では、特に5Gを取り巻く業界の動向や、関連企業などにスポットをあてました。

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5Gの経済効果

5Gの可能性

5Gの特徴を少しだけ復習してみましょう。
特徴として代表的なものは、超高速」「超低遅延(リアルタイム)」「多数同時接続です。
高速性ばかりが注目されがちですが、遅延が少なく同時接続できる端末数が多いことも強みです。
たとえば、使用用途が自動運転や遠隔医療、産業機械なであれば低遅延という特徴を優先し、動画ではもちろん通信速度を優先するなど、どの特徴を活用するかといった仕様を柔軟に選択できるところに大きな強みがあります。

その結果、ビジネスチャンスが幅広い領域へ広がることになるのです。

5Gの3大特徴(可能性)

超高速
最高伝送速度 10Gbps
(現行LTEの100倍)
現在の移動通信システムよりはるかに速いブロードバンドサービスとなり、2時間の映画は3秒あればダウンロード可能なる。
超低遅延
(リアルタイム)
1ミリ秒程度の遅延
(現行LTEの1/10)
利用者が遅延(タイムラグ)を意識せずに、ほぼリアルタイムで遠隔地のロボットなどを精緻に操作、制御できる。
多数同時接続100万台/km²の接続機器数
(現行LTEの100 倍)
自宅の部屋にある、身の回りの100個以上の機器がネットに接続されるようになる。(現行技術ではスマホやPCなど数個だけ)
出所:総務省資料

参考資料👇

総務省の電波政策2020懇談会報告書

経済効果(業界規模)

それでは、この5Gというものが経済に与える影響はどのような規模になるか見てみましょう。

[5Gによる経済効果]
国内46.8兆円 [総務省の資料より]5Gによる経済効果、2020年代
世界140兆円(1兆3,000億ドル)2019年基準[PwCの資料より]5GのGDP押し上げ効果、2030年まで

5Gを活用した次世代のスマートなビジネスが始まり、その影響は多業種に及びます。
しかし、その恩恵を得るためには戦略的なアプローチを策定する必要があるので、まずは5Gが経済に与える影響をしっかりと把握しておきましょう。

国内

国内における5Gによる経済効果は46.8兆円とされており、その内訳は下の表になります。

5Gの産業別経済効果の試算

分野経済効果内容
交通(移動、物流等)21兆円交通事故の低減7.7兆円。
交通渋滞の低減12兆円。
自動運転による運転時間の有効活用1.1兆円。
カーシェアリング普及効果0.1兆円。
オフィス/ワークプレイス13.4兆円製造業におけるオペレーションの最適化7.5兆円。
在庫効率化1.2兆円。
メンテナンスによる人件費効率化4.7兆円。
医療(健康、介護)5.5兆円新たな予防サービス市場拡大4兆円。
予防サービスに伴う生活習慣病低減による医療費削減効果1兆円。
健康寿命延伸に伴う介護軽減0.5兆円。
小売り(金融、決済)3.5兆円流通関連合計3.5兆円の内訳↓)
流通業(ショッピング関連)における販売促進効率化、発注量最適化による効果は合計1.2兆円。
自動チェックアウト、リアルタイム販促等の効果2.3兆円
スマートハウス/ライフ
(日用品、通信等)
1.9兆円家における各種の効果(スマートホーム
農林水産業4,268億円品質向上による単価の向上(センシングやビッグデータ活用等による稲作における効果)3,968.2億円。
生産効率向上による削減効果300億円。
エンターテインメント(教育関連3,230億円スマート教育導入による効果
スマートシティ/スマートエリア
(施工管理・メンテナンス等)
2,700億円橋梁更新費用の低減
橋梁に限定した遠隔センシング等による予防保全の実施による効率化は合計2,700億円。
エンターテインメント(観光関連2,523億円クラウド等を利用したリアルタイム翻訳ツールが広く普及することによる訪日外国人対応が進むことによる効果2,157億円。
デジタルサイネージの整備等によるインバウンドへの効果366億円。
スポーツ(フィットネス等)2,373億円スポーツ観戦の分野でARト等スタジアムにおける観戦経験の向上等
合計46.8兆円
出所:総務省「電波政策2020懇談会」資料

上の表はこちらの資料に基づきます👇(総務省の電波政策2020懇談会資料)

参考資料モTF7-1「新たなモバイルサービスの展開が特に期待される分野」

👇電波政策2020懇談会の各種情報はこちらの総務省HPからご覧いただけます。

総務省|電波政策2020懇談会|会議資料・開催案内等
世界
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コンサルティングファームであるPwCは、5Gから大きな恩恵を受けることが想定される「医療」「スマートユーティリティ」「消費者&メディア」「製造」「金融サービス」の5業種を対象に、2030年までに5Gがもたらしうる経済効果を推計しています。

その結果、5Gが2030年までに世界のGDPにもたらす押し上げ効果をなんと1兆3,000億ドルと試算しています。

コンサルティングファームとは
企業の抱える課題に対して意見を求められ解決まで導く企業のことを指します。
そこで働く人たち(コンサルタント)には高いスキルと問題発見・解決能力が求められます。


業種ごとに見ると、経済的視点から見た潜在的影響力が80%を超えたのは3業種で、最大の効果が予想されるのが「医療アプリケーション」で5,300億ドル。
2番目がIOTを活用したエネルギー管理などの「スマートユーティリティ管理」で3,300億ドル、そして3番目が消費者&メディア向けアプリケーションで2,540億ドルとなりました。

🔷5Gが2030年までに世界のGDPにもたらす業種別の押し上げ効果予測(米ドル-2019年基準)

業種経済効果(米ドル
医療5,300億
スマートユーティリティ3,300億
消費者&メディア2,540億
製造業1,340億
金融サービス850億
(合計)1兆3,000億
出所:PwC

また、その効果を国域別で見ると、日本は760億ドルで、米国や中国に次ぐ経済効果が期待されています。👇

🔷5Gが2030年までにもたらす国別の経済効果予測(米ドル-2019年基準)

経済効果(米ドル)
米国4,840億
中国2,200億
日本760億
ドイツ650億
英国540億
インド420億
韓国300億
オーストラリア200億
出所:PwC

👇詳しく知りたい方はPwCさんの資料をご覧ください
出所:PWC 「5Gが世界経済に与える影響」

👇PwCさんのHPはこちら

PwC Japanグループ
PwC Japanグループは、日本におけるPwCグローバルネットワークのメンバーファームおよびそれらの関連会社の総称です。各法人は独立して事業を行い、相互に連携をとりながら、監査およびアシュアランス、コンサルティング、ディールアドバイザリー、税務、法務のサービスをクライアントに提供しています。

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5Gに関わる企業

それでは、通信、モビリティ、建機・産業機械、コンテンツ、IoT・ローカル5G、セキュリティーなど5Gと関わりがある業界について、どんな企業があるのか、それぞれ特徴も見ていきましょう。

🔷通信
通信キャリアは、5Gを活用した新ビジネスで重要な役割を果たしています。
既存携帯事業の契約者数が遠からず頭打ちになる中、法人事業が成長のカギ。
5Gの特徴を生かし、様々なプレーヤーとの協業を模索しています。

企業特徴
NTTドコモ手広くパートナーを開拓、顧客同士のマッチングも推進。
自治体との連携にも積極的。
個人向けはパブリックビューイングの進化版なども想定。
2020年12月に上場廃止。
(NTTから100%出資)
KDDI通信だけでなくクラウドや分析など5G利活用に必要なものをフルセットで用意、幅広い需要を狙う。
個人向けはコンテンツメーカーとのセットプランに注力。

トヨタ自動車から13%出資/ソフトバンクと地方の5G拠点整備で合弁/テレビ朝日HDと5G時代の動画配信事業で合弁。
ソフトバンクソフトバンクグループが出資する海外先進企業からノウハウを得る。
合弁で国内向け事業の新会社を続々設立。

モネ・テクノロジーズへ37.3%出資/ソフトバンクグループから40%出資/KDDIと地方の5G拠点整備で合弁
楽天モバイル2020年4月に携帯電話事業を本格開始。
ネットワークの完全仮想化で5Gフルサービスの早期開始を目指す。
NECと5Gコアネットワーク開発で協業、システムの海外販売も視野

楽天グループから100%出資。

日本ではNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクがアプリ開発に注力中です。
BtoBtoXのビジネスモデルで事業拡大を狙っています。

(上記のうち3社に関する会社)

企業特徴
日本電信電話
(NTT)
グループで持つクラウドやセキュリティー、映像や音声の伝送技術を生かしてBtoBtoXを推進。
「オールジャパン」を掲げトヨタ自動車やNECと提携。

NTTドコモへ100%出資/NECへ4%出資/トヨタ自動車と相互出資
ソフトバンクグループソフトバンクビジョンファンドを軸に、世界中の有望なテクノロジー分野に出資。
ライドシェアなど5G応用分野に強い。

ソフトバンクへ40%出資。
楽天グループ楽天市場を軸とするEC国内大手。
銀行、クレカ、キャッシュレス、フリマアプリも展開。

楽天モバイルへ100%出資。

🔷モビリティー
5Gのリアルタイム・大容量を生かした車両制御や周辺情報把握により、完全自動運転やリモート運転の実現も現実的に。
車から取得する情報を活用した配車サービスも広がっています。

企業特徴
トヨタ自動車コネクテッドカーでKDDIと連携の一方、モネではソフトバンクとも組むなど全方位的に提携。
NTTともスマートシティ推進で資本提携。

モネ・テクノロジーズへ37%出資/KDDIへ13%出資/日本電信電話(NTT)と相互出資
モネ・テクノロジーズソフトバンクとトヨタが2018年9月に設立したモビリティー企業。
コネクテッドカーとIoTの融合で新サービス創出を目指す。
ソフトバンクから37.3%、トヨタ自動車から37%、ホンダから10%、SUBARUから1%出資。
マツダ、スズキ、日野自動車、いすゞ自動車も出資。
ホンダソフトバンクと組んで共同研究、商用環境レベルで5Gを用いたコネクテッドカーの走行試験に成功。
モネ・テクノロジーズへ10%出資
SUBARUソフトバンクと組んで、5Gを用いた安全運転支援、自動運転制御の実証実験。
モネ・テクノロジーズへ1%出資
日産自動車ドコモと協業し車内外のセンサーで収集した情報とクラウド上のデータを統合した運転支援技術を開発中。

🔷建機・産業機械
遠隔からショベルカーやダンプカーを動かす現場作業が可能に。
省人化に加え、危険な作業場での活用が見込まれています。

企業特徴
コマツドコモと建設・鉱山機械の遠隔制御・監視システム開発などで協業。
DMG森精機工作機械を5Gで接続することで消耗状況などを監視し、リアルタイムでメンテナンスを実施。
稼働停止時間の圧縮を目指す。
ブリヂストンセンシング技術を活用し、鉱山のダンプトラックに装着しているタイヤの予防保全を実施。

🔷コンテンツ
スマホでのスムーズな動画視聴を実現。
視点を選べる360度のリアルタイム配信や超高画質画像も可能になりました。

企業特徴
ダゾーングループ
(英国)
旧パフォームグループ。
スポーツ動画配信サービス「DAZN]を提供。
カプコン格闘ゲーム「ストリートファイター」の対抗リーグを2021年10月に立ち上げ。
ドコモと協業し、5Gを活用して配信。
ウォルト・ディズニー・ジャパン動画配信事業で協業し、ドコモのポイント会員向けに定額制の動画サービスを提供。
テレビ朝日HDネット動画の強化を掲げてKDDIと月額制の動画配信サービス「TELASA]を2020年4月開始。
KDDIと5G時代の動画配信事業で合弁
CyberZサイバーエージェントの100%出資子会社。
動画配信プラットフォーム「OPENREC.tv」を運営。

🔷IoT/ローカル5G
IoT
大容量・多数同時接続で、多数のデバイスを制御したり、センサーから多くの情報を取得したりできるようになる。
工場などでの遠隔監視や異音感知などの他、農業や酪農での活用も期待されています。

ローカル5G
政府はキャリア以外の企業に対しても、地域限定で使える5G電波を割り当てる。
スマート工場などでの活用が想定されています。

企業特徴
NEC瞬時に顔認証するシステムを開発中。
NTTと資本業務提携、次世代通信網技術を共同開発へ。

NTTから4%出資。
パナソニックドコモやKDDIと高精細画像の伝送などで共同実験。
富士通KDDIとゼンリンの3社で自動運転向け想定のデジタル地図開発で連携。
東芝KDDIとIoTをグローバル活用したい法人の事業支援で連携。
ローカル5Gではスマート工場での活用想定。
ソニーグループ車載向けセンサーに強み。
ドコモとはニューコンセプトカートで協業。
日立製作所IoT基盤「ルマーダ」を推進。
米グローバルロジック社を買収し連携。
京セラローカル5G向けコネクティングデバイスと小型基地局をセットで提供。

ローカル5Gとは
エリア限定の5G。
総務省は民間企業、自治体などが通信キャリアを通さなくても5Gサービスを提供できるよう、キャリア向けとは別の周波数帯を設定。
参入業者は、基地局への投資コストはかかるが、利用者のニーズに合わせてチューニングした通信サービスを独自に構築できる。

🔷セキュリティー
高精細画像を超低遅延で高速伝送することにより、高いレベルの遠隔監視が可能に。
顔認証で登録者以外の「不審者」を発見する警備も可能です。

企業特徴
セコムKDDIと5Gの技術実証や警備ドローンなどで提携、スタジアムで実証実験も。
ドコモとはAI搭載のバーチャル警備員を共同開発。
ALSOKドコモと高精細カメラやAIを活用して、展望台などから広範囲を遠隔監視する次世代警備システムの開発で協業。

🔹医療
高精細画像の超低遅延・高速伝送に加え、大量の手術データをリアルタイムに伝送することで、熟練医による遠隔地からの手術などが可能になりました。


これらのように、専用機器で構築されてきた通信ネットワークも汎用サーバーで代替するクラウド化が進んでいます。
また、中国ファーウェイ製品を敬遠する通信キャリアが増えた結果、NECなどの参入機会も増している状況です。

5Gは業界構造を変える可能性も秘めています。



参考となる資料のリンクをいくつか貼りましたが、これら以外にも、総務省の「情報通信白書」が、情報源として役立ちます👇(5Gを含む情報通信技術、電波政策などを網羅的に解説しています)

情報通信白書(総務省、年刊)

関係情報:情報通信関連:情報通信白書

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